
食から見たコペンハーゲンと京都。/ シェフ 芳賀 龍
NEW NORDIC × JAPANESE CULTURE
北欧と日本文化の交差点を探る vol.1

和と北欧。日本とデンマーク。あるいは、京都とコペンハーゲン。
ILLUMS 青山店で行われている企画展“Light and Shadow”の連動特集として、二つの文化に共通する美学や価値観を探ります。
第一弾は、京都のレストランを経て、現在コペンハーゲンのレストラン〈noma〉に在籍するシェフ・芳賀 龍(はがりょう)さんによるエッセイ。京都とコペンハーゲンを行き来する中で、身をもって感じた体験をもとに、両者に共通する美しさや文化について綴っていただきました。

久しぶりに戻ってきた京都にて。
尊敬する日本料理店に置かれて自然に馴染む北欧の椅子。カイ・クリスチャンセンやフィン・ユールの家具を見て、完璧な均衡を保ちながらもどこかその造形、流線にあらわれる美しさに、僕は「細み」とか「柳腰」といった言葉を思い浮かべる。
九鬼周造が述べた“民族的色彩の著しい語”、「いき」。素晴らしい日本料理やしつらえと、それらの椅子は自然な繋がりがあると思っている。
かたやコペンハーゲン。
コペンハーゲン国立美術館にて、ハンス・J・ウェグナーの椅子に腰掛けながらハンマースホイを見て心が動く。深く沈んだ灰色を基調に陰影で描かれる美しさに、少しの緊張感とともに心地よさを感じる。
それは、茶室の暗さや本席に上がった時の静けさ、その場に流れるピンと張った空気と似ている。
京都とコペンハーゲン。遠く離れた二つの都市で、共通の何かに、僕の心が反応する。
異国にいるのに、なぜかふと感じる懐かしさ。「あ、きれいだな」と瞬時に感じる心。人類の大移動の歴史なのか、遠い昔に刻まれたDNAなのか、容易く理解できるそれらには遥か昔からの繋がりがあったのでは?と想像がふくらむ。
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料理で考えてみると、“油彩”か“水彩”か。
僕のイメージで例えるなら、フランス料理は、“油彩画”で火の料理。
牛の骨と野菜を焼き付けて長い時間火にかけてかけてフォンドヴォを取る。バターもたっぷり使い、ワインや酸味の使い方など、キレやコクが強い。
対して、日本料理は“水彩画”で水の料理。
鰹節と昆布の澄んだ出汁。水分が豊富で油が少なく、醤油や味噌、酒や麹。発酵食品で味が決まる。もちろん酸味もあるが、淡さや丸みを感じる。
では、新北欧料理と定義される料理はどうだろう。
たしかに油彩のようにたっぷりと絵具ののった濃厚な味わいもある。ただ、果物や野菜から抽出した水分、出汁。その土地に完全にフォーカスするが故にたどりついた発酵、麹。松やバラなど、さまざまな草花から抽出したオイル。瑞々しい香りや水分の多さ。
その時その場所の自然、実りを直に感じる味わいは、今までフランス料理を筆頭にFine diningで表現されてきたものよりも、日本の“水彩画的感覚”との距離の近さを感じる。
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レストランでの仕事はさながら戦場だ。
チームの良い雰囲気はあれど、大所帯ともなればなおさら。英語を中心に多言語(非常に訛りの強いイタリア人シェフの英語は、僕にとってはもう新しい言語だ)が飛び交う中で仕事をすると、当然ストレスもかかる。
でも、ある一定の忙しさを超えると集中が快感になる。手の動きはイメージの半歩先をいって、頭の中がすーっとなり、様々な問いが浮かんでくる。
“当時、海外において世界共通語で日本の美や情緒を伝えた偉人たちが、その感性を持ったまま現代に生きていたら何をするのだろう?”
“過去に存在していた彼らから受け取った信号を、僕らはそれぞれの仕事でどのように未来に応答していくのだろう?”
今を生きる僕らは、先に進むために過去を見返すことができ、テクノロジーを使えば物理的な距離は関係がなくなる。
過去と今、時間と場所。
日本と北欧に共鳴するもの。
その点と点とを自由に行き来する。
未知だけど既知。
そんな言葉が最近よく思い浮かぶ。
そういう美しさや文化、そして美味しさがある気がして今日も厨房に立っている。

Ambientec
Turn+(ターン プラス)
すべてのパーツを、金属のかたまりから削り出して構成されたテーブルランプ。回転しながら削り出す様子から「TURN」という名前は生まれました。
Turn+(ターン プラス)は、TURN同様の削り出した金属の素材から3種類のバリエーションをベースに、職人により磨き上げられたクリスタルガラス、亜鉛ダイキャストのケージで構成しデザインを最高の質感で実現しました。
ferm LIVING
メリディアン ランプ
ユニークなフォルムのスタンドライト
魅力的なフォルムは、3つのシンプルな幾何学的要素に基づいています。この3つの要素を組み合わせることで、すっきりとしたモダンな表現を実現しています。
マットな質感がインテリアに馴染みやすく、どんなお部屋にも合わせやすいです。


GUBI
TS サイドテーブル ラウンド
特徴的な細い脚が美しく交差するディテールとテーブルトップの対比が存在感を放つTSコレクション。
どんな部屋にも洗練された彫刻的な美学を生み出します。先鋭デザインユニットとして世界を席巻するガムフラテージが、コペンハーゲンの有名なレストランThe Standard(ザ・スタンダード)のために設計しました。
レストランの頭文字からその名がつけられています。素材の厳選と、シンプルな中に繊細な美学が宿る、ガムフラテージらしいデザインです。
ferm LIVING
ウタ ピース
ユニークなフォルムのサイドテーブル。
不規則なフォルムはインテリアにインパクトを与えること間違いなし。ブルータリズムにインスパイアされたUtaの魅力的なフォルムは、シンプルな幾何学的形状で構成されています。
素材はパイン材を使用。濃いブラウンと木の温もりがナチュラルな印象です。ユニークなフォルムと調和しエレガントな表情を作り出します。スツールとしてもお使い頂けます。


<開催中>
「“Light and Shadow” with POJ Studio」
POJ Studio による日本の器や和紙の照明、お香、花器、お茶など、フルラインナップに近い豊富な品揃えで展開予定。ILLUMSの提案するニューノルディック家具との組み合わせを、ご体験いただけます。
■場所:ILLUMS 青山店(〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-35-8 ハニービル青山 1F)
■開催期間:2023年4月20日(木)〜5月16日(火)※水曜定休
■営業時間:11:00 〜 19:00